2021 年 32 巻 4 号 p. 233-244
本研究の目的は,抑うつや攻撃性などの情緒・行動的問題が顕在化しやすい児童・青年期(小学4年生から中学3年生)において,自閉スペクトラム症特性と二次障害的な心理社会的適応(向社会的行動,抑うつ,不安および攻撃性)を媒介する変数としての休み時間の役割を検討することであった。小学4年生から中学3年生までの通常学級に所属する5,366組の一般小中学生及び保護者から得た大規模データを用いて検討を行った。パス解析の結果,ASD特性が高いほど休み時間に非対人的な遊びをして過ごしていることが多いことが明らかとなった。また,ASD特性と心理社会的適応の関連を媒介変数の休み時間がどの程度説明するかを推定した結果,休み時間の遊びを介した間接効果は,全間接効果(休み時間+友人関係)の2~6割,総合効果(直接効果+間接効果)の2~4割程度に及ぶことが示された。休み時間の遊びは,友人関係の下位要素の一つと見なすことができるが,向社会的行動では間接効果の65%,抑うつでは46%,攻撃性では26%を説明したことから,友人関係における休み時間の重要性の高さが示唆された。