本研究は自治体から提供された,1万名を超える児童・生徒の福祉・健康・教育に関する行政記録情報をもちいて,就学前に経験した家庭の経済的困難(生活保護受給)と3歳児健診情報に基づき評価された子ども自身の健康・発達上のリスクがある場合に就学後の学力が低いことを示した。家庭の経済的困難に晒された期間が長いほど学力の低さとの関連が大きいことが分かった。また,3歳児健診が未受診である場合にも就学後の学力が低いことが示された。すべての児童を悉皆的に把握できる福祉・健康・教育関連の行政記録情報が所管横断的に集約され,子ども期における発育上のリスク要因と成長との関連を明らかにすることは,科学的根拠に基づくアウトリーチやプッシュ型支援の効果的な実施のために極めて重要であることが考えられた。