クラスサイズの問題に関しては多くの研究知見が蓄積されてきたが,小中学校の学校種間を通したクラスサイズが児童生徒に与える影響や,学校移行に伴うクラスサイズの増減を経験することがもたらす影響は明らかになっていない。本研究の目的は,小学校でのクラスサイズ,小中学校移行の際に生徒が経験するクラスサイズ及び学年生徒数の変動による,学力偏差値の推移の違いを検討することである。国語(5,171名),社会(4,109名),理科(4,994名)の,小学校第4学年終了時から中学校第2学年終了時までの学力偏差値を児童生徒個別に結合したパネルデータを作成し,マルチレベル成長モデルによる分析を行った。その結果,国語,社会,理科で,小学校第4学年終了時でクラスサイズが小さい方が学力偏差値が高い傾向が見られること,社会と理科で,小中学校移行時に在籍する学年の生徒数が増え,学級のクラスサイズが大きくなることが中学校第1学年以降の学力偏差値の推移に負の影響を与えていたことが示唆された。本研究には教師や児童生徒に対する追加的な負担を発生させずに,二次利用データによって小中学校をまたいだ数時点のパネルデータを作成し分析を行った点に特色がある。しかし,教師や児童生徒に対して直接調査を実施しなかったため,クラスサイズの変動などが学力偏差値推移に影響を与えるに至る過程が明らかにできなかったという問題が残された。
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