発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
子どもから洋服の着脱状況に関する詳細な情報を引き出すための質問方法
久原 恵理子和智 妙子宮寺 貴之藤原 佑貴
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2024 年 35 巻 3 号 p. 148-161

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抄録

性犯罪被害を受けた子どもから,被害を受けた時の洋服の着脱状況について詳細な情報を得ることは,犯罪捜査において重要である。そこで本研究では,洋服の着脱状況に関する詳細な情報を得るための質問方法を明らかにするために,5~6歳の未就学児を対象とした実験を行った。本研究で検討した質問方法は,①はい・いいえ質問,選択式質問,選択式質問に「選択肢がどっちとも違う」を加えた質問(以下,選択式質問+以外),WH質問の4つの質問条件による回答内容,②クローズド質問の後で,自由報告を促す質問で尋ねるペアリングによって得られる回答内容,③選択式質問+以外の後続の質問に対する回答内容への影響,である。分析の結果,はい・いいえ質問と比較して,選択式質問は簡潔な回答が多く,WH質問は詳細な回答が多かった。また,ペアリングを用いることで詳細な回答が引き出せることが示された。さらに選択式質問+以外について,質問で提示された選択肢を回答することを回避し,後続の質問に対して詳細な回答が得られることが示された。得られた知見から,司法面接に対する応用的示唆を考察した。

【インパクト】

本研究は,子どもから洋服の着脱状況に関する情報を得るための質問方法について,はい・いいえ質問と比較して,詳細回答はWH質問,簡潔回答は選択式質問のほうが多いことや,クローズド質問の後で自由報告を促す質問をすると詳細回答が得られることを実証的に明らかにした。さらに,「A?B?それともどっちとも違う?」という質問には,質問で提示された選択肢を回答することを回避する効果が示された。

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© 2024 一般社団法人 日本発達心理学会
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