2024 年 52 巻 2 号 p. 72-79
【要旨】 アナフィラキシーは周術期の重篤な有害事象の一つである.原因薬物に対する免疫学的反応あるいは非免疫学的反応を呈し,迅速かつ的確な治療が行われなければ,急速に重篤化するため,アナフィラキシーの診断および治療に習熟する必要がある.
一般的なアナフィラキシーの初期治療は救急蘇生と同様に,気道確保,呼吸補助,循環維持を図り,適切なアドレナリンの投与,高濃度酸素の吸入,十分な補液を行う.麻酔中のアナフィラキシー治療も一般的な対応と特に変わるものではないが,麻酔中は静脈路が確保されていることが大きな違いである.
日本麻酔科学会は2021年2月に「アナフィラキシーに対する対応プラクティカルガイド」を制定し,麻酔中に発生するアナフィラキシーに対する指針を公開した.このプラクティカルガイドでは,① エッセンシャルサマリーに続いて,麻酔中に発生するアナフィラキシーに関する,② 総論,③ 疫学,④ 術前診断,⑤ 発症時診断,⑥ 治療,⑦ 術後診断に分けて,現時点での研究成果に基づいて解説を加え,指針を示している.エビデンスが蓄積され,このプラクティカルガイドがより良い方向に改訂されることが期待される.