2009 年 45 巻 1 号 p. 36-45
本論文では,重度の肢体不自由者のために筋電位信号を利用した新しいミュージック・インタフェースを提案する.まず計測した筋電位信号から筋活動発生のタイミング,筋活動の持続時間,筋活動レベル変化率の3つのパラメータを抽出する.そして,これらのパラメータを用いてあらかじめ打ち込まれている楽曲のテンポ,ニュアンス,音量を制御する.これにより操作者は,随意的に筋電位信号をコントロールすることで,指揮者感覚で楽曲演奏が可能となる.重度の肢体不自由者でも演奏可能であることを確かめるため,口角下制筋の左右に電極を2対取り付け,頚椎損傷患者による操作実験を行った.その結果,3動作を識別し演奏できることを示した.さらに市販のMIDIキーボードと比較し,テンポ,ニュアンス,音量の操作性について検証した.その結果,統計学的に有意な差は見られず,操作者の演奏意図を反映した演奏がある程度可能であることを確かめた.