抄録
本研究では,高齢者群と若年者群を対象に,非統合スイッチとの比較実験によって,統合スイッチの有効性を検討した.また,ディスプレイの階層化がスイッチ操作にいかなる影響を及ぼすかを明らかにした.高齢者のスイッチ操作の平均作業時間とトラッキング誤差は,それぞれ若年者の約2倍程度と約1.6~1.7倍程度であった.ディスプレイの階層化に関しては,両年齢群ともに,作業時間,正答率,トラッキング誤差への影響が認められなかった.見やすさ,操作しやすさの主観評価の観点からは,両年齢群ともに,統合スイッチの有効性は見出されなかった.若年者群の単独課題,二重課題および高齢者群の単独課題では,スイッチタイプと設置位置が作業時間に及ぼす影響が認められ,非統合スイッチをステアリング部に設置した場合の作業時間が有意に短く,省スペース効果がある統合スイッチのパフォーマンスは必ずしも高くならなかった.高齢者群の二重課題条件では,スイッチタイプと設置位置が作業時間に及ぼす影響は認められなかったことから,二重課題条件下ではいずれのスイッチタイプと設置位置の組み合わせ条件も能力の限界を超えた作業条件であり,ステアリング・スイッチの正の効果が認められなかったのではないかと推測された.