抄録
本研究の目的は,動的な筋収縮時に記録した表面EMGを正規化するために基準として用いる等尺性の最大随意収縮(MVC)試技を,どのような関節角度(筋長)で実施し表面EMGを記録するのが適切であるかを明らかにすることであった.七人の健康な成人男性が被験者として,等速性筋力測定装置を用いて,短縮性と伸張性および等尺性の肘関節屈曲伸展運動を行った.それらの試技の間に,肘関節の角度,角速度および肘関節まわりのトルクと,上腕二頭筋と上腕三頭筋の表面EMGを記録した.等尺性収縮中のトルクと表面EMGおよび動的収縮中の表面EMGは,動的収縮中のトルクを推定するために用い,推定されたトルクと動的収縮中のトルクとの差から推定誤差が求められた.推定誤差を小さくするという規準のもと,CONでは筋長が小さくなる関節角度が,また,ECCでは筋長が大きくなる関節角度が,MVCを実施するためにより適切であると判断された.