人間工学
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原著論文
身体負担の少ない沐浴槽の最適な高さに関する研究
松井 真弓 村本 淳子長谷川 智之犬飼 さゆり斎藤 真三澤 哲夫
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2019 年 55 巻 6 号 p. 239-246

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抄録

本研究は,術者への身体負担の最も少ない沐浴槽の高さについて明らかにすることを目的に,2段階の実験を実施した.第1実験では,術者の主観的評価による作業のしやすい沐浴槽の高さ,すなわち調整高と人体計測値の関係を検証した.調整高と人体計測値間には強い正の相関を認め(p<0.01),身長から調整高を推算するための一次回帰式が得られた.調整高は身長の平均57.7%に相当し,肘頭高よりも平均55.0 mm下方であった.第2実験では,既存の沐浴槽の高さと調整高を基準に4段階の沐浴槽の高さを設定し,沐浴施術時の筋活動および生体力学的モデルを用いた作業姿勢の評価を行った.腰部脊柱起立筋の%MVCおよび腰部椎間板圧縮力は,沐浴槽の高さが低い場合に増加し,腰部への負担が大きいことが示された.一方,僧帽筋の%MVCや肩関節まわりのモーメントは,沐浴槽の高さが高い場合に増大し,肩部や上肢への負担が大きいことが示された.これらの腰部および頸肩部の負担を総合的に評価した結果,術者にとって至適な沐浴槽の高さは調整高と思われた.したがって,術者ごとに身長から算出された調整高に設定することが推奨される.

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© 2019 一般社団法人 日本人間工学会
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