2020 年 56 巻 2 号 p. 74-78
本研究は没入型バーチャルリアリティ(VR)システムを用いて行った地誌的見当識障害に関する定量的計測結果の妥当性を検証することを目的とする.22名の定型発達児童が実験に参加した.VR課題は,仮想環境の床面に配置された柱の中に隠されたターゲットを歩いて探索することである.VR課題における探索時間と方向感覚チェックリスト(TOQ-C),及び視知覚関連検査の得点の相関を分析した.TOQ-Cが示す5つの指標のうち,認知地図の形成能力およびランドマークの利用能力に関する評定点が,俯瞰不可能なVR実験における結果と相関を持った.本研究で採用されたVR課題は地誌的見当識障害を妥当に評価しうる有用な方法であり,今後地誌的見当識障害の患者による検証の必要性が指摘された.