2022 年 58 巻 5 号 p. 213-222
本稿は新しい目を休ませる方法として『iCLO(アイクロ)』を人間工学研究者に紹介することを目的としている.iCLOは「漫然と目を開けているだけで,実際には目を閉じても支障がない時には,安全な環境を確保した上で短時間でも目を閉じること」と定義される.iCLOにより,眼精疲労,ドライアイ,目のかすみといった自覚症状が改善し,瞬目間隔が短縮することが報告されている.iCLOは自分のペースで狭い部屋でも実施できるため,特にリモートワーク時に適している.今後iCLO workingやiCLO web surfingなど様々な『iCLO~』による新しい目の休め方が可能になると考えられ,iCLOのリサーチ・イシューの範囲はかなり広いと想定される.iCLOは外界からの視覚情報を受け取るタイミングや量を選択的,能動的に制御することにより,コンピュータービジョン症候群の予防やパフォーマンス向上に大きな役割を果たすことが期待される.