2024 年 60 巻 5 号 p. 276-282
手掌への触情報提示技術のための基礎的知見として,手掌上に単純な触刺激と振動を付与した触刺激を提示し,認識した手掌上の位置と実際に提示した刺激の位置とのずれを比較する実験を行った.右利き大学生20名が実験に参加した.左手掌の6点の提示位置に触刺激を提示し,実験参加者には自身の手掌が映ったタブレット上に,自身がどの位置に触刺激を受けたのかを報告してもらった.その結果,ずれ量は刺激提示位置により有意に変動したが,振動の付与による有意な変動は認められず,刺激提示位置と振動付与との交互作用についても有意な変動は認められなかった.平均ずれ量は9.62 mmであり,小指球と手首に近い領域の方が他の刺激提示位置よりずれ量が大きかった.刺激提示位置間の距離は最も短いところで22.1 mm離れているため,本実験で与えた刺激提示位置に触情報を与えた場合,異なる位置に誤認識するケースは少ないと考えられる.