人間工学
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実体顕微鏡を用いた微細領域における奥行弁別作業と習熟効果に関する研究
四宮 孝史大久保 堯夫
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1994 年 30 巻 1 号 p. 41-59

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抄録

実体顕微鏡を用いて両眼視差による奥行量の相対的な比較実験を行い, 奥行量の弁別閾を高めるための手段としての視認性を高める要因であるパターン (形), 輪郭線, ならびにテクスチュアについて, その特性を検討した. 次に, 視認性を高めて安定した状態をつくりだし, テクスチュアによる刺激 (情報) と錯視の効果について考察した. 被験者を熟練者と非熟練者のグループに分けて実験を行うことで, 錯視と習熟の効果についての検討もあわせて行った. 結果をまとめると以下のとおりである.
(1) 視認性の高いパターンの奥行量の弁別閾値は, 両眼による視差角の差で46秒付近にあることが確認された. (2)輪郭線は, エッジ (端面) の加工精度を高めることで視認性が高まることが確認された. (3)テクスチュアの刺激 (情報) は, ベース面が微細な場合にかぎって視認性を高めることがわかった.
また, 刺激量を増大させると, 奥行量と等しくなるまで徐々に視認性を低下させた. そして, 奥行量以上の値になると錯視の効果が急激に高まり, 極端に視認性をわるくすることがわかった. (4)熟練者と非熟練者とでは, 奥行量の識別閾値に明らかな差があった.また,非熟練者は錯視を生じやすいことがわかった.

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© 一般社団法人 日本人間工学会
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