抄録
人間の感覚機能の加齢による衰えは, 嗅覚でも見られることが報告されている. 加齢による嗅覚機能の衰えを補い, 生活における危険臭の危険度を感知するための代行システムとして, ガスセンサの利用が考えられる. ガス洩れや火災といった危険を検知するためのガスセンサシステムは, これまでいくつか報告されているが, 食品の腐敗という危険に対するものはほとんど見られない. 本研究では食品の腐敗臭を取り上げ, 複数のガスセンサの応答と心理量との対応によって, 食品の腐敗度判定を行うセンサシステムの構築を試みた. 心理実験は19名の主婦により行い, そこで得たニオイに対する心理量および腐敗度判定値と, 脂質二分子膜被覆水晶振動子センサおよび金属酸化物半導体ガスセンサで測定したデータとをニューラルネットワークにより対応させた. これらの対応関係を利用することによって, ガスセンサで食品の腐敗度判定を行うシステムを構築する可能性を示す.