抄録
本研究では, 人間同士のすれ違い行動における回避軌跡に基づいた回避領域を実験的に求めた. すれ違い行動軌跡の一般的な特性を知るために, 路上におけるすれ違い行動の実験を実施した. 実験はVTRで記録し, 動作軌跡を大きく3つの行動タイプに分類した. 最も出現頻度が高く回避領域抽出に適した行動タイプは, 被験者が実験者まで接近してから相手を避けて被験者の初期軌道に復帰する行動であった. この行動タイプの回避領域を求めるために実験室内におけるすれ違い行動の実験を実施して, 静止, 歩行および小走りしている実験者に対して歩行している被験者がすれ違う回避軌跡を分析した. 回避動作の特性として, 回避軌跡は懸垂線に最適に近似し, 歩行速度はほぼ一定であることを見いだした. さらに, 懸垂線の軌跡から回避領域を算出した. 実験結果から, 被験者が静止および歩行している実験者とすれ違う回避領域はほぼ等しいことを確認した.