抄録
本研究では, 二関節筋の影響を含め, 下肢の複数の関節にわたる可動域 (ROM) の幾何学的な表記法を考案した. また, そのROMの表記はマトリックス形式で数学的にも示され, それは単関節筋と二関節筋に起因するROMを分離して表現した. この方法はROMを系統的, 定量的に検査でき, 従来の臨床的なROM測定法のすべてを包含し, また, 重度の関節拘縮をもつ患者に対しても適用できる. 痙直型脳性麻痺患者 (SCP) を対象に, 写真分析法によって下肢関節角の測定を行い, 彼らのROMを本幾何学的方法によって評価した. SCP患者は関節可動域の減少を示し, それは関節軟部組織の拘縮, 単関節筋および二関節筋の短縮に起因するようであった. この症状は関節運動の廃用と生来の痙性から引き起こされたようである. これらの結果からも, 本幾何学的方法の必要性と有用性が明らかとなった.