自動車運転中に心理的負荷が与えられたときの影響を明らかにするため, 運転中に暗算をさせて, 反応時間を計測した. また, 運転中の暗算によって反応時間が長くなる人を, 静止状態の実験で識別することが可能であるか調べた. 若年層, 中年層, 高齢層各10人を被験者とし, 市街路を模擬したコースにおいて実験を行った. 暗算によって, いずれの年齢層も, 反応時間の平均値や個人差, 個人内のばらつきは増加するが, その効果が高齢層で著しいことが示された. 暗算しながら運転している場合とたんに暗算をしていた場合では, 反応時間に相関は認められず, 運転中の心理的負荷の影響が大きい人を, 静止状態の実験で識別することは困難であると考えられた.