本研究では, 光学補正により観察者の調節を適切に作用させられる立体ディスプレイを用いて, 立体映像を観察することによる眼精疲労の回復効果を検討した. 実験1では, 立体映像の観察前後に視力と眼精疲労の自覚症状を測定することで, 回復効果の程度を検討した. そして, 実験2では, 一日中VDT作業を行っている事務職員を被験者として, 朝の測定値および平面映像観察と比較することで回復効果を検討した. また, 被験者の視覚状態に合わせて徐々に遠方視させることを目的とした刺激呈示のフィードバック機能を用いて, 調節の緊張緩和を促した. 実験の結果から, 調節が適切に作用する立体映像は, 平面映像と比較して, 眼精疲労の回復効果が高いことが示された. 本研究で得られた眼精疲労の回復効果は, 一過性の反応であると考えられるが, 見えがはっきりするような感覚や眠気がなくなるような爽快感は, 調節が適切に呈示される立体映像により生じたのだと考察された.