物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
原 著
大脳皮質の興奮性を調整する新しい試み
─経頭蓋静磁場刺激による抑制効果の検討─
野嶌 一平美馬 達哉
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 21 巻 1 号 p. 40-44

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抄録

【目的】強力な静磁場刺激を頭蓋上から与えることで一次運動野の興奮性を抑制できる可能性が報告されている.今回は,静磁場刺激による効果の検証とその神経生理学的メカニズムを考察し,臨床応用の可能性を模索する.【方法】健常成人9名を対象に左一次運動野にネオジム磁石による静磁場刺激を20分間実施した.一次運動野の興奮性評価は,介入前,介入後0分,10分,20分,30分時点における運動誘発電位(MEP)振幅と安静時運動閾値(rMT),皮質内抑制/促通(SICI/ICF)とした.【結果】一次運動野の興奮性の指標であるMEPは,介入後0分で有意な抑制効果を示した.またrMTとSICIにも有意な変化がみられた.【考察】本研究では,頭蓋上からの20分間の静磁場刺激曝露により大脳皮質興奮が約20%抑制された.その機序として,rMTの結果より静磁場刺激の細胞膜への影響が考えられた.更にSICIの変化は,γアミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid:GABA)を介した抑制性メカニズムの活性化を示唆している.これらの結果より,静磁場刺激が膜興奮性閾値を上昇させ,皮質内抑制性機構を活性化させることでMEPを抑制したと考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本物理療法学会
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