物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
21 巻, 1 号
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特別講演
シンポジウム
原 著
  • 田中 稔, 藤田 直人, 藤野 英己
    2014 年 21 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    下腿深層筋の萎縮に対する遠心性収縮を伴う中周波電気刺激(ES)による予防効果を検証した.SDラットを対照群(Cont群),後肢非荷重群(HU群),後肢非荷重期間中に求心性収縮を伴うES群(HU+cES群),等尺性収縮を伴うES群(HU+iES群),遠心性収縮を伴うES群(HU+eES群)に区分した.2週間後,ヒラメ筋を摘出し,筋線維横断面積とユビキチン化タンパク質発現量を測定した.筋線維横断面積はCont群,HU+eES群はHU群に比べて有意に高値を示した.さらにHU+eES群は,他の収縮様式を伴うES群に対して有意に高値を示した.ユビキチン化タンパク質発現量はCont群,HU+eES群はHU群に比べて有意に減少した.HU+eES群は,他の収縮様式を伴うES群に比べて有意に減少した.これらの結果から遠心性収縮を伴う中周波電気刺激は深層筋の萎縮に対して効果的な予防法であることが示唆された.

  • ─末梢神経電気刺激と筋振動刺激による比較─
    窪田 慎治, 平野 雅人, 守下 卓也, 上原 一将, 船瀬 広三
    2014 年 21 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,痙縮改善のために広く用いられている末梢神経電気刺激および筋振動刺激によって賦活される感覚入力が脊髄反射回路に及ぼす影響について,H反射法を用いて検討を行った.対象は,健常成人11名で,被験筋はヒラメ筋とした.介入電気刺激は,総腓骨神経に対して,1秒間隔で100 Hz(5 trains),前脛骨筋運動閾値強度の電気刺激を15分間行った.介入振動刺激は,前脛骨筋筋腹部に対して,100 Hz(2 mmストローク)の振動刺激を15分間行った.評価項目は,Ia相反抑制量,シナプス前抑制量,Hmax/Mmaxとし,介入前,介入直後,15分後,30分後にそれぞれ計測を行った.結果は,電気刺激による介入では,介入直後にIa相反抑制量の増大がみられ,振動刺激による介入では,介入直後から15分間にわたりHmax/Mmaxの減少が認められた.本研究から,末梢神経および筋肉に対する刺激方法の違いによって,脊髄反射回路にそれぞれ異なった活動変化を引き起こすことが示唆された.

  • ─経頭蓋静磁場刺激による抑制効果の検討─
    野嶌 一平, 美馬 達哉
    2014 年 21 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】強力な静磁場刺激を頭蓋上から与えることで一次運動野の興奮性を抑制できる可能性が報告されている.今回は,静磁場刺激による効果の検証とその神経生理学的メカニズムを考察し,臨床応用の可能性を模索する.【方法】健常成人9名を対象に左一次運動野にネオジム磁石による静磁場刺激を20分間実施した.一次運動野の興奮性評価は,介入前,介入後0分,10分,20分,30分時点における運動誘発電位(MEP)振幅と安静時運動閾値(rMT),皮質内抑制/促通(SICI/ICF)とした.【結果】一次運動野の興奮性の指標であるMEPは,介入後0分で有意な抑制効果を示した.またrMTとSICIにも有意な変化がみられた.【考察】本研究では,頭蓋上からの20分間の静磁場刺激曝露により大脳皮質興奮が約20%抑制された.その機序として,rMTの結果より静磁場刺激の細胞膜への影響が考えられた.更にSICIの変化は,γアミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid:GABA)を介した抑制性メカニズムの活性化を示唆している.これらの結果より,静磁場刺激が膜興奮性閾値を上昇させ,皮質内抑制性機構を活性化させることでMEPを抑制したと考えられた.

  • ─予備的準ランダム化比較対照試験─
    吉田 陽亮, 生野 公貴, 庄本 康治
    2014 年 21 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】人工膝関節全置換術(TKA)後症例に対する感覚強度の神経筋電気刺激(NMES)の効果について予備的に検討した.【方法】対象はTKAを施行した症例16名とし,NMES群8名と非実施群8名に割り付けた.術後3週目より5日/週×2週間,感覚強度のNMESを大腿四頭筋へ実施した.評価は,最大膝伸展筋力(MVIC),下肢骨格筋量(LSMM),Timed Up and Go test(TUG),2分間歩行テスト(2MWT),Stair Climbing Test(SCT),Visual analogue scale(VAS),Japan Knee Osteoarthritis Measure (JKOM)を測定した.【結果】術後4週目のMVICと2MWT はNMES群で有意に改善し(p<0.05),術後8週目でも改善傾向を示した.【考察】感覚強度のNMESは筋力と歩行能力を改善させる可能性がある.

  • 前重 伯壮, 田淵 寛人, 古賀 由華, 越智 茜, 植村 弥希子, 石川(青山) 倫子, 三好 真琴, 杉元 雅晴, 寺師 浩人, 宇佐美 ...
    2014 年 21 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    遺伝子導入を中心に,超音波による各種分子の細胞内導入法であるソノポレーションが適用されている.我々は,核内のヒストンアセチル化により遺伝子発現を調節する短鎖脂肪酸の抗線維化作用を報告してきた.本研究では,短鎖脂肪酸の酪酸が有する抗線維化作用に対する超音波照射の影響をケロイド由来線維芽細胞において検討した.耳垂ケロイド由来線維芽細胞を60-mm tissue culture dishに播種し,その24時間後に酪酸0 mM(control),4 mM(低濃度酪酸),16 mM(高濃度酪酸)を添加した.超音波照射条件については,周波数3 MHz,SATA強度0.5 W/cm2,照射時間10分間,ERA 6.0 cm2を使用し,照射時間率20%(パルスモード)および100%(連続モード)の超音波を低濃度および高濃度酪酸添加直後,および24時間後に照射し,酪酸添加48時間後にmRNAを採取した.real time PCR法にて線維化促進因子であるTGF-β1,a-SMA mRNA発現を定量した.低濃度酪酸添加単独では,a-SMA,TGF-β1ともに有意な変化が認められなかったが,パルスモードおよび連続モード超音波照射によりTGF-β1発現の有意な抑制(p<0.01)が観察された.高濃度酪酸においては,酪酸添加単独でa-SMA,TGF-β1ともに強く発現が抑制され,超音波照射による追加的効果は認められなかった.低濃度酪酸添加時に超音波照射の追加的抑制効果を認めたことは,超音波照射が酪酸の作用を補完的に促進したことを示唆している.

  • 山本 征孝, 島谷 康司, 長谷川 正哉
    2014 年 21 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】急性期脳卒中片麻痺患者を対象に,脛骨神経に対する末梢感覚神経刺激(Peripheral Sensory Nerve Stimulation:PSS)と課題指向型練習の併用治療が足関節底屈筋力や歩行能力に及ぼす影響を調査した.【方法】当院入院中の急性期脳卒中片麻痺患者14名を,PSSを行う群(以下PSS群)7名と電極のみ貼り付けて実際にはPSSを行わない群(以下placebo群)7名の2群に分けた.両群とも30分間課題指向型練習を併用して行った.評価項目はModified Ashworth Scale(MAS),最大歩行速度,足関節底屈筋力とし,介入前後で評価した.【結果】両群の全対象者においてMASの変化は認められなかった.PSS群で最大歩行速度,足関節底屈筋力が介入後に有意な改善を示した.【結論】脛骨神経に対するPSSと課題指向型練習の併用治療は,急性期脳卒中片麻痺患者の足関節底屈筋力や最大歩行速度を即時的に改善する可能性が示唆された.

症例報告
  • ─シングルケーススタディ─
    小嶌 康介, 生野 公貴, 庄本 康治
    2014 年 21 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は脳卒中1症例にて部分免荷トレッドミル歩行訓練(BWSTT)と足関節背屈筋に対する随意運動介助型電気刺激(IVES)の併用治療の臨床有用性を検証することとした.対象は脳梗塞後左片麻痺を呈した59歳男性とした.研究デザインは各期4週間のABデザインを用い,8週間のフォローアップを行った.B期にBWSTTとIVESの併用治療を実施した.評価はFugl-Meyer Assessment(FMA),足関節背屈の自動関節可動域(A-ROM),膝伸展筋力,10 m歩行速度,2分間歩行距離(2MD)とした.FMA,10 m歩行速度はA期に最も改善した.膝伸展筋力はフォローアップに最も改善した.A-ROMと2MDはB期に最も改善した.機器設定は5分程度で可能で治療の受け入れは良好であった.A-ROMや2MDのB期の改善について本治療が足関節の随意性や歩行の協調性の改善に寄与したものと考えられた.本治療の臨床有用性は良好であった.

  • ─シングルケースデザインによる効果検証─
    生野 公貴, 松尾 篤, 吉川 奈々, 中原 彩希, 庄本 康治, 森本 茂, 鍋島 祥男
    2014 年 21 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は脳卒中後重度感覚障害に対する経頭蓋直流刺激(tDCS)と理学療法の併用治療の有効性をシングルケースデザインで検討した.症例は左視床出血後約3年経過した50歳代の男性である.表在および深部感覚は脱失で,右上肢に著明な感覚性失調を認めていた.tDCSは左体性感覚野に陽極を置き,刺激強度は2 mAとした.介入頻度は週1回20分とし,続いて40分の上肢練習を行った.練習セッションとベースライン測定に続いて,3セッション目をSham刺激,続く5セッションは真の刺激として,計8セッションの介入を実施した.評価は9-Hole Peg Test, Box and Block Test,感覚検査を実施した.その結果,tDCSによる有害事象はなかった.Sham刺激期間と比較してtDCS期間での全評価項目の有意な改善は認めなかった.感覚障害に対するtDCSは安全に実施可能であったが,本症例の運動および感覚障害に対して明らかな効果を認めなかった.

短報
  • 池田 崇, 久合田 浩幸, 大矢 暢久, 長澤 弘
    2014 年 21 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    足底部への温熱療法が腰部脊柱管狭窄症(LCS)を有する虚弱高齢者のバランス能力に及ぼす影響を検討した.対象はLCSを有する虚弱高齢者13名,平均年齢82.6歳.バランス能力評価として,開眼片脚立位時間(OLS),Timed up and Go test(TUG),Functional Reach(FR),筋力評価として等尺性膝伸展筋力(KE)を測定した.条件は75°Cの温水で加温した乾熱式ホットパックを足底部に3分間施行した.足底部への温熱療法の前後で,OLS(pre: 5.8±5秒,post: 8.3±6.4秒)とFR(pre: 26.2±7.2 cm, post: 29.5±6.9 cm)は有意に向上した.TUGは差を認めなかった.KEは0.32±0.1 kgf/kgであった.健常者と同様にLCSを有する虚弱高齢者においてもバランス機能に対する即時効果が認められた.改善を認めたOLSとFRはともに評価時に全足底部が接地している割合が多く,足底からの感覚入力が得られやすい条件設定であると考える.足底部への温熱療法は即時的なバランス改善効果を有すことが示唆され,短時間であったとしても施設利用に際しての安全管理の側面で転倒予防に寄与し得ると思われる.

  • ─シングルケーススタディによる検討─
    北裏 真己, 東 亮太, 久山 純, 松井 有史, 庄本 康治, 丘田 英人
    2014 年 21 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,透析患者に対する神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation: NMES)が身体機能や生活の質(quality of life: QOL),透析効率に及ぼす影響を予備的に検証することとした.症例1は,糖尿病性腎症により2009年から透析導入に至った59歳の男性で,症例2は,慢性糸球体腎炎により2012年から透析を開始した60歳男性であった.両症例とも,独歩は自立レベルであり,週3回,4時間/日の血液透析を実施していた.本研究は,各期間を8週としたAB型シングルケースデザインを採用した.基礎水準期には通常透析治療をおこない,操作介入期には透析治療中に大腿四頭筋と腓腹筋に対して電気刺激を計60分間実施した.体成分評価として体重,体水分量,下肢骨格筋量,身体機能評価として膝伸展筋力,6分間歩行,timed up and go test,maximum walking test,透析効率としてKt/V,urea reduction ratio,QOL評価としてKDQOL-SFを用い,各期前後に測定した.結果は,2症例ともに,操作介入期前後において下肢筋力,KDQOLの総得点,KDQOLの下位尺度である「睡眠」の改善が認められた.症例1は,下肢骨格筋量が電気刺激後に0.46 kg増加し,身体機能についてもすべての項目で改善が認められた.一方,症例2では膝伸展筋力が増加していたにも関わらず,下肢骨格筋量は0.45 kg減少していた.透析効率は両症例ともに明らかな改善はなかった.透析時間を利用したNMESは下肢骨格筋の筋力増強やQOL,睡眠障害を改善させることが示唆された.

  • Goh Ah Cheng, 木村 貞治, 阿部 裕一, 崕 啓介, 永富 丈博, 濱田 宇玄
    2014 年 21 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス

    近年では,電磁場(electromagnetic field, EMF)を痛みやその他の健康問題に対して適用することが普及してきている.わが国でも,EMFを用いた刺激装置は数多く存在している.その様なEMF刺激装置の1つとして,低周波正弦波の電磁場(low frequency magnetic field, LFMF)刺激装置である磁気刺激装置(マグドクターウェーブ,ファミリーサービスエイコー製,以下,磁気刺激装置)がある.そこで本研究の目的は,磁気刺激装置の高出力モードと低出力モードを用いた2種類のLFMF刺激が運動神経の興奮性に与える影響を,健常人のヒラメ筋H波とM波を指標として検証することとした.被験者を相対的高出力であるモードA(435.3 mT/s)および相対的低出力であるモードB(404.3 mT/s)にランダムに割り付ける観察研究を用いて,60分間のLFMF刺激を行った.その結果,LFMF刺激装置である磁気刺激装置が,健常人におけるa運動ニューロンの興奮性を増加させる可能性が示された.この増加は,LFMFの出力強度と刺激時間に直接関連していたことから,LFMFの出力を増加させ,刺激時間を長くすると,a運動ニューロンの興奮性が増大する可能性があるものと考えられた.

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