2018 年 45 巻 2 号 p. 107-110
オープンステントグラフト(open stent graft:OSG)を用いた全弓部大動脈置換術(total arch replacement:TAR)では、末梢側の大動脈吻合を行う必要がなく、手術侵襲の軽減が期待される。今回OSG使用時のTARと従来のTARでの人工心肺法について比較検討を行った。OSGを使用したTAR症例24例をO群、従来のTAR症例14例をT群とし、両群間における術中、術後因子について比較検討した。周術期死亡、合併症に関して両群間に差はなかったが、O群の方がT群に比し大動脈遮断時間(p=0.04)、脳分離灌流時間(p=0.05)、下半身循環停止時間(p=0.04)が有意に短く、ICU帰室後12時間の出血量が少量であった(p=0.03)。OSGを用いたTARは体外循環関連時間を短縮し、出血量の軽減に寄与する可能性がある有用な術式であると考えられた。