体外循環技術
Online ISSN : 1884-5452
Print ISSN : 0912-2664
ISSN-L : 0912-2664
原著
3D-CTを用いた逆行性心筋保護法における右心系灌流不全の解剖学的留意点
西村 優一徳留 大剛寺田 直正佐々木 健渡辺 英樹
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 46 巻 4 号 p. 388-392

詳細
抄録

逆行性心筋保護(retrograde cardio plegia:RCP)の欠点として、右心系灌流不全が知られており、原因の1つに冠状静脈(coronary vein:CV)の血管走行が挙げられる。右心系に関連するCVは、小心静脈(small cardiac vein:SCV)、中心静脈(middle cardiac vein:MCV)を中心に構成される。これらは、冠状静脈入口部(coronary sinus ostium:CSos)近位部に合流するため、RCPカニューレを深く挿入してはならないことが知られているが、CV走行には個人差があり、許容される深さは症例によって異なると言える。本研究では、RCPに関連するCSos周囲の3D画像を作成し、CV走行の個人差がRCPに与える影響について解剖学的に検討した。全50例中、SCVは36%しか存在せず、すべてCSos近位部ではなくMCVに合流しており、最も右房側に合流するCVはMCVであった。CSosからMCVまでの距離は中央値6.0mm(1.8~15.6mm)と非常に近接しており、比較対象としたRCPカニューレ付属バルーンの最小サイズが10.0mmであったことから、MCVより深く挿入される可能性が高い。RCPにおける右心系灌流不全を最小限にする条件として、RCPカニューレをすべてのCVより右房側に留置可能、かつSCVの発達が良好である必要があるが、今回の検討で条件を満たす症例はなかった。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本体外循環技術医学会
前の記事
feedback
Top