体外循環技術
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46 巻, 4 号
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研究論文
  • 柏 公一, 黒澤 秀郎, 高橋 舞, 古賀 早也香, 朝倉 陽香, 藤谷 早織, 藤城 和樹, 谷田 勝志, 久保 仁, 加賀美 幸江, 根 ...
    2019 年 46 巻 4 号 p. 377-381
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

    2011/4から2017/9までに保険償還されている植込型補助人工心臓(implantable ventricular assist device:iVAD)を装着した患者延べ128名とその介護者延べ330名を対象とし、機器取扱いのトレーニング終了時に行ったテストの実施回数を調査した。また、iVAD装着後3か月、6か月目に患者が行ったトレイルメイキングテスト(trail making test:TMT)-Bの結果とテストの実施回数との間に関連性があるか検討を行った。統計学的な検討ではFisherの正確検定を用い、p<0.05で有意差ありとした。

    3回以上にわたって評価を繰り返した患者および介護者の割合は、EVAHEART®、DuraHeart®、HeartMate II ®、Jarvik2000®の順にそれぞれ0、0、8.7、10.0%、0、0、5.8、11.3%であった。また、患者に対して行ったTMT-Bの検査結果とテストの実施回数との間には関連性が認められ(p=0.002)、その感度は29.1%、特異度は95.5%であった。以上より、TMT-Bの結果を参考にすることで効率的にトレーニングを進めることができる可能性はあるが、テストの実施回数はデバイスの種類に依存する傾向にあり、過去の検討からデバイスの種類(EVAHEART®、DuraHeart®、HeartMate II ®、Jarvik2000®)とヒューマンエラーの発生率との間に関連性が認められていることから、iVADのトレーニングを効率的に行うためにはユーザビリティを改善することが必要である。

  • ― 安定運転に及ぼすオクルージョンの制御因子 ―
    加藤 正太, 草間 良昌, 阿部 薫, 芝本 隆
    2019 年 46 巻 4 号 p. 382-387
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

    我が国では、安全性および生体適合性を優先した開心術に、遠心ポンプが選択される。一方、諸外国では、操作性や経済性の面からローラポンプを使用した開心術が増加している。本研究は、ローラポンプの長時間使用による圧閉度の円周振れに注目し、灌流温度(perfusion temperature:Pt)を圧閉度の規定因子として着目した。

    圧閉度の円周振れの顕現を評価するため、ローラ径の異なる3種類のポンプを用いて、Ptおよび電気抵抗値(resistance sigma:Rz)、圧力値を測定した。また、これらのポンプをJIS-T1603に基づき順次同一条件に設定して、時間経過に伴う圧閉度の変化を観察した。それぞれ、ポンプのPtおよびRzは30~60分毎に上下動を繰り返し、時間経過によって圧閉度が変化した。また、圧力値は30分毎に上昇し、その後測定不能となった。

    この現象は、Ptの変化が血液粘度に影響を与え擬似血液温度の上昇により、圧閉度の圧力変化によるRzの変化として現れたと推測できる。したがって、灌流温度Ptを監視することは、ローラポンプの圧閉度の適切な制御へとつながり、より生理的な体外循環を実施するのに欠かせない要素と考える。

原著
  • 西村 優一, 徳留 大剛, 寺田 直正, 佐々木 健, 渡辺 英樹
    2019 年 46 巻 4 号 p. 388-392
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

    逆行性心筋保護(retrograde cardio plegia:RCP)の欠点として、右心系灌流不全が知られており、原因の1つに冠状静脈(coronary vein:CV)の血管走行が挙げられる。右心系に関連するCVは、小心静脈(small cardiac vein:SCV)、中心静脈(middle cardiac vein:MCV)を中心に構成される。これらは、冠状静脈入口部(coronary sinus ostium:CSos)近位部に合流するため、RCPカニューレを深く挿入してはならないことが知られているが、CV走行には個人差があり、許容される深さは症例によって異なると言える。本研究では、RCPに関連するCSos周囲の3D画像を作成し、CV走行の個人差がRCPに与える影響について解剖学的に検討した。全50例中、SCVは36%しか存在せず、すべてCSos近位部ではなくMCVに合流しており、最も右房側に合流するCVはMCVであった。CSosからMCVまでの距離は中央値6.0mm(1.8~15.6mm)と非常に近接しており、比較対象としたRCPカニューレ付属バルーンの最小サイズが10.0mmであったことから、MCVより深く挿入される可能性が高い。RCPにおける右心系灌流不全を最小限にする条件として、RCPカニューレをすべてのCVより右房側に留置可能、かつSCVの発達が良好である必要があるが、今回の検討で条件を満たす症例はなかった。

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