体外循環技術
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落差式逆行性脳灌流法の検討
田畑 喜朗関口 敦会田 治男片倉 健二郎森田 高志菊池 寛二笹川 繁吉田 譲大木 康則福山 智明見目 恭一
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1996 年 23 巻 1 号 p. 72-74

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抄録

当施設では弓部大動脈瘤の手術の際,落差式脳分離体外循環を用いている。1995年12月~1996年5月までの7例に対し,本回路を流用し逆行性冠灌流カニューレ(DLP社RCSP15Fr)を用いて,落差式逆行性脳灌流を施行した。落差式逆行性脳灌流は,20℃ の超低体温下循環停止とし,注入圧40mmHg以下で心筋保護液を注入した。次に,同冠灌流カニューレを上大静脈へ挿入し上大静脈圧30mmHg以下,脳灌流量は250~350ml/minを目標に落差式逆行性脳灌流を行った。結果は,上大静脈圧は平均30.6mmHgで,落差は平均115cmを必要とした。脳灌流量は平均193.8ml/min,灌流時間は平均60分であり,7例中5例で目標流量が得られた。従来の落差式脳分離回路の利点を全て活かし,かつ順行性脳分離体外循環時と同等の操作で行え,カニュレーション操作も1本で済むため時間の短縮ができた。また,過去の経験から順行性の場合でも問題が少ないので,超低体温下循環遮断法と併用し,症例に応じて順行性,逆行性を適時使い分けることが望ましいと考えられる。

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© 日本体外循環技術医学会
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