抄録
【要旨】VAVD用バクスター社製吸引コントローラーと2種類のリザーバー(専用バクスター社製BMR-4500SG,非専用ミンテック社製BioCor200-IHS)を用い臨床評価した。対象は,成人開心術症例26例で,体外循環システムは,通常のローラーポンプ回路の静脈リザーバーを閉鎖式にし,吸引コントローラー,リザーバー内圧モニター,陽圧防止弁を追加した。吸引コントローラーは,制御圧が安定して操作性もよくVAVD導入をしやすかった。リザーバーは,両方とも支障なく使えたが,バクスター社製の付属回路が不可欠であった。ただし付属陽圧防止弁は機能不十分であった。VAVD-20~-30mmHg下の脱血量増加効果は,水シュミレーションでは60%,臨床例では69.2%の症例で約20~30%の増量効果を認めた。離脱時の遊離ヘモグロビンは40mg/dl以下で血尿を認めなかった。脱血量が増えなかった原因は,カニューレ先のコラップスが考えられ,改善のための工夫が必要である。脱血量が確実に増量できれば,単に落差脱血を補うだけでなく,脱血カニューレ・回路の細径化,短縮,充填量削減(脱血回路を非充填とする)を図れる可能性があり,MICS症例だけでなく,通常の体外循環症例に応用できると考えられた。