抄録
【要旨】左室脱血方式の補助人工心臓離脱時の循環補助手段として,拡張型心筋症にて装着の男性3例(うち1例は左房脱血)にPCPSシステムを用い,その有用性を検討した。システムは,PCPSテルモ社製エマセブ,出血回収サッカー(ローラーポンプ),貯血槽,返血ローラーポンプを組み合わせた。離脱は,常温,心室細動下で行うため,至適灌流量の維持と出血の対応の2点に注意して行い,全例とも,LVAS,PCPSからの離脱は問題なかった。1例で出血によると考えられる体温低下(35.8~34.4℃)と若干の灌流量不足(2.0l/min/m2)を経験したが,短時間であり,自己心機能良好にて問題とならなかった。本システムは,簡素で,低充填量,生体適合材料のため低侵襲で,万が一の長期補助循環にも対応できる。通常は,至適灌流量が得られ,出血にも対応でき,安全かつ容易に循環補助できるが,多量出血,長時間補助による体温低下時や,至適灌流量が得られないときには,熱交換器付き人工肺を使用するなど,温度を調節できる処置をとるか,通常の体外循環システムを用い,安全,確実な補助手段下で行うことも考慮する必要がある。