体外循環技術
Online ISSN : 1884-5452
Print ISSN : 0912-2664
ISSN-L : 0912-2664
常温体外循環と中等度低体温体外循環
上屋敷 繁樹植木 弘一西田 慎一中嶋 康仁吉岡 信也染谷 忠男
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 28 巻 2 号 p. 27-34

詳細
抄録

【要旨】今回我々は,待機的冠動脈バイパス術を行う50例において,常温体外循環(W群25例) ,中等度低体温体外循環(C群25例)を無作為に分類し,灌流量2.2l/min/m2として,灌流圧W群70mmHg,C群60mmHg以上に維持して比較検討した。その結果は,1)体外循環前,中,後の計3ポイントにて測定されたnor&epinephrine,dopamine,angiotensin IIの推移,elastase値とα1protease inhibitorの推移,thromboxane B 2,serotonin値の推移,C3 & C5,血管収縮物質endothelin値の推移は,すべてにおいてW群とC群の間に差異は認められず,組織適合性の面ではW群とC群に優劣は認めなかった。2)体外循環中の体血管抵抗値はW群にて有意に低く,至適灌流圧(70mmHg)維持にneosynesin投与が必須であった。体血管抵抗値とそれぞれの血管作動性物質との間には相関を認めず,自律神経の抑制された麻酔下体外循環での血管緊張度は,主に温度に依存するものと考えられた。3)ICU入室時の肺血管抵抗値はW群にて有意に低かった。4)体外循環中の水分バランスでは有意差を認め,そのバランスの相違がC群における術後のPO2値を有意に低くし,肺血管抵抗値の上昇を来した原因とも考えられた。5)術後心拍出量は両群に差異を認めなかったが,max CPK-MB値はW群で有意に低値であった。6)頸静脈PvO2 ,lactate値はW群にて低値を示したが有意差はなく,CPK-BB値は有意に低かった。また今回,この研究による脳神経障害は両群間に認めなかった。7)術後24時間出血量はW群にて有意に少なかった。8)近赤外線モニターの経時変化は,体外循環中W群でC群に比べ低値を示したが,両群間に有意な差は認めなかった。9)腎機能(creatinine,BUN)の変化は両群に差はなかった。10)肝機能(ケトン体,肝静脈PvO2,lactate値,ヒアルロン酸)はW群にて低い傾向を示した。

著者関連情報
© 日本体外循環技術医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top