抄録
Stanford A型大動脈解離手術における中心送血(Seldinger送血、Apex送血)の方法と有用性について報告する。急性大動脈解離手術22例のうち、中心送血を行った18例を対象とした。Seldinger送血では、まず上行および弓部大動脈を直接エコーで観察し、真腔内送血が可能な部位を検索した後、エコーガイド下に静脈留置針を穿刺しガイドワイヤーを真腔に留置した。スタイレット付きカニューレFLEXII-022-16-Aをガイドワイヤーに沿って挿入、留置した。Apex送血では、脱血カニューレを先に留置し、心尖部より上行大動脈にAA-022-TFTAを約10~15cm挿入、留置した。エコーでカニューレの先端位置を観察し、送血ライン圧の拍動をしっかりと確認した。ゆっくり送血流量を上げることが重要であった。中心送血は、他の送血法に比べ、執刀から体外循環開始までの時間が有意に短く(42±19vs81±26分、p=0.002)、迅速な体外循環の確立ができ、確実に真腔への順行性送血を行うことができる有用な方法と考えられる。