2023 年 3 巻 1 号 p. 22-27
はじめに:近年,摂食障害とトラウマや解離との関係についての報告が増えている。
対象と方法:これらの関係について文献的に整理し,トラウマや解離を伴う摂食障害の適切な治療法について考察する。
結果:神経性やせ症患者の約2割,神経性過食症の3~6割に心的外傷後ストレス症(posttraumatic stress disorder; PTSD)が合併しており,とくに過食症状とPTSDとの関連が強い。また,幼少期に虐待体験があると,約3倍摂食障害になりやすいという報告がある。トラウマから引き起こされる恐怖や怒りなどの否定的感情が,過食が多いほど強くなり過食のあとはしばらく安定することから,過食がひとつの感情制御法になっていることがわかる。解離も感情制御のための病的な反応という側面をもっている。PTSDや解離を合併した摂食障害の治療としては,摂食障害とPTSDそれぞれの認知行動療法を統合する方法が試みられている。
考察:いずれの治療でも大事なのは,まず安全で安定した治療環境を確立することである。