日本摂食障害学会雑誌
Online ISSN : 2436-0139
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目次
巻頭言
原著
  • 井上 建, 小坂 浩隆, 岡崎 玲子, 飯田 直子, 磯部 昌憲, 稲田 修士, 岡田 あゆみ, 岡本 百合, 香山 雪彦, 河合 啓介, ...
    2023 年 3 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2023/10/05
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。

特集企画~摂食障害の背景を理解する~
  • 眞田 陸, 小坂 浩隆
    2023 年 3 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2023/10/05
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    近年,発達障害と摂食障害の関連性は徐々に明らかになってきている。摂食障害の患者で自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum disorder)の特徴をもつ患者は多く,ASD特性の感覚の問題やこだわりが,摂食障害の症状につながっている可能性がある。また,注意欠如・多動症の症状も摂食障害と関連し,とくに衝動性は過食行動と関連している。しかし,発達障害は摂食障害の原因であるという因果関係は十分にわかっておらず,発達障害が摂食障害の特異的な素因であるのか,非特異的な素因であるのかもわかっていない。また,発達障害と摂食障害に共通する特徴があるという報告は増えている一方で,その他の併存症の影響に留意した研究は少ない。実際の臨床においては,これらの先行研究の課題に注意して,評価・診断や治療を行っていく必要がある。そして,これらの先行研究の課題を解決する新たな研究が求められている。

  • 野間 俊一
    2023 年 3 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2023/10/05
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年,摂食障害とトラウマや解離との関係についての報告が増えている。

    対象と方法:これらの関係について文献的に整理し,トラウマや解離を伴う摂食障害の適切な治療法について考察する。

    結果:神経性やせ症患者の約2割,神経性過食症の3~6割に心的外傷後ストレス症(posttraumatic stress disorder; PTSD)が合併しており,とくに過食症状とPTSDとの関連が強い。また,幼少期に虐待体験があると,約3倍摂食障害になりやすいという報告がある。トラウマから引き起こされる恐怖や怒りなどの否定的感情が,過食が多いほど強くなり過食のあとはしばらく安定することから,過食がひとつの感情制御法になっていることがわかる。解離も感情制御のための病的な反応という側面をもっている。PTSDや解離を合併した摂食障害の治療としては,摂食障害とPTSDそれぞれの認知行動療法を統合する方法が試みられている。

    考察:いずれの治療でも大事なのは,まず安全で安定した治療環境を確立することである。

  • 佐藤 康弘, 福土 審
    2023 年 3 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2023/10/05
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    神経性やせ症と神経性過食症に代表される摂食障害について,脳機能画像研究を通して病態解明の試みが進んでいる。背外側前頭前野は空間情報と海馬の記憶情報を集約して合理的な行動を計画する,認知制御系の中心となっている。眼窩前頭野は視認した物体の情報と扁桃体からの情動シグナルを受けて価値の評価を行う報酬系を構成している。AN(anorexia nervosa)患者では様々な課題で背外側前頭前野の活動亢進に関する複数の報告があり,認知制御の過剰統制が硬直した行動を生み出している可能性がある。眼窩前頭野については食物に対して反応の亢進が指摘されている。また,内受容感覚と情動,認知制御系と報酬系の情報を結びつける島皮質の機能異常,内省に関わる内側前頭前野の異常も認められている。しかし従来の研究では標本数の十分でない小規模なものが多く信頼性,再現性に限界があったため,多施設共同研究による病態解明の試みが国内で進行中である。

連載 文献紹介 第3回
連載 摂食障害治療の今 第3回
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