日本摂食障害学会雑誌
Online ISSN : 2436-0139
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目次
巻頭言
原著
  • —中・高・大学生の比較—
    武部 匡也
    2024 年 4 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    はじめに:女子中学生・高校生・大学生における食行動異常の二過程モデルの妥当性を検証すること,および,食行動異常に与える各変数の影響力を発達段階で比較することを目的とした。

    対象と方法:女子中学生・高校生・大学生各300人を対象に質問紙調査を実施した。

    結果:食行動異常の二過程モデルは発達段階で共通して妥当性を有することが認められた。高校生と大学生ではダイエット行動が,中学生ではネガティブ感情が最も食行動異常に悪影響を与えていた。

    考察:摂食障害の発症リスクが高まり始める思春期において,モデルに含まれるリスク要因を標的にした予防的介入の開発を進める根拠を提供した。予防的介入を各発達段階に合わせて最適化するための基礎資料となる。

    結語:本研究は,これまで女子大学生を中心に検証されてきた食行動異常の二過程モデルを,女子中学生・高校生にまで対象を拡張した点で意義が大きい。

  • —混合研究法を用いて—
    北島 翼, 岩波 純平, 大谷 良子, 井上 建, 菅原 彩子, 服部 紀代, 髙宮 靜男, 鈴木 眞里, 作田 亮一
    2024 年 4 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    はじめに:コロナ禍は子どもや青年の日常生活に多大な影響を与えた。本研究は,コロナ禍における学校現場での生徒の摂食障害関連行動の実態を明らかにし,教育と医療の連携に活かすことを目的とする。

    対象と方法:全国の養護教諭を対象に摂食障害対応に関するオンラインアンケートを実施し,混合研究法で分析した。

    結果:約6割の回答者に摂食障害対応経験があり,コロナ禍で増加を感じた養護教諭は13%だった。学校現場では,コロナ禍での摂食障害の変化と,コロナ禍前から変わらない傾向が混在して認識されていた。また,生徒がSNSで情報を得るが,十分に吟味できていないことが課題として挙げられた。

    考察:コロナ禍での生活様式の変化が摂食障害の発症と悪化に影響している。摂食障害への対応指針等を養護教諭へ周知する方法を工夫する必要がある。

    結語:本研究を基にした,学校への支援体制の整備とデジタルリテラシー教育の強化が求められる。

  • 望月 洋介, 磯部 智代
    2024 年 4 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,3セッションで構成された摂食障害のオンライン家族心理教育グループ(家族教室)の効果を検討した。

    方法:静岡県摂食障害支援拠点病院主催のオンライン家族教室に参加した家族(39名)を対象に,事前・事後で19項目のアンケートを実施した。分析には,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いた。

    結果:摂食障害の知識・情報や外在化の考え方を含む対処技能の獲得,精神的な苦痛の軽減などの効果が確認できた。一方,家族教室の場に安心感や親密感は持てていたが,孤立感の軽減は確認できなかった。

    考察:オンライン家族教室であっても,一定の効果があることが確認されたが,家族教室終了後に余韻が残らずに関係が途切れてしまうオンライン特有の問題や,家族内の協力体制に関するプログラム面の課題,複数の家族成員での参加を推奨する必要性について指摘した。加えて,回復例や家族のストレスケアに関する情報提示の工夫の必要性についても述べた。

症例報告
  • 横田 英博, 浅見 文邦, 山中 結加里, 野原 伸展, 山崎 允宏, 吉内 一浩
    2024 年 4 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    30歳男性。中学生の頃から食物が喉を通る時に快感を感じる・安心するという理由から食物の反芻を行うようになった。高校では陸上部に所属,長距離走選手として好成績を残すため,ダイエット目的に食事制限を開始すると,程なくしてむちゃ食い・嘔吐が始まった。摂食症を疑われ近医精神科を受診,体重は回復しむちゃ食い・嘔吐も消失したが,反芻は持続した。大学に入学すると,人間関係のストレスからむちゃ食い・嘔吐が再燃した。就職後は業務のストレスからむちゃ食い・嘔吐が増悪した。会社の健診で体重減少と白血球減少があり総合病院内科を受診,摂食症に伴う異常と評価され同病院の精神科に紹介されたが,摂食症に対する専門治療の必要性が高いと判断され,当科に紹介された。神経性やせ症 むちゃ食い・排出型と診断,著しい低体重に対し栄養療法を行ったところ,むちゃ食い・嘔吐は軽減したが,反芻は持続した。反芻に対する積極的な治療は行わず,食事場所の整備など社会的調整を推奨した。反芻症から神経性やせ症に移行した男性症例は稀であると考えられたため,文献的考察を加えて報告する。

特集企画~社会の中の摂食障害~
  • ~COVID-19パンデミックが摂食障害に与えた影響とその対策~
    大迫 鑑顕, 木村 大, Fernando Fernández-Aranda
    2024 年 4 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    2019年末にアジアで発生したCOVID-19のパンデミックにより,多くの人々の日常生活や社会的接触が制限された。この結果,特に青少年の精神的健康に深刻な影響が及んだ。パンデミックの影響で摂食障害患者の病状も悪化し,パンデミックを契機に摂食障害を発症するケースも増加した。パンデミックにより遠隔医療が積極的に導入され受療環境が変化したことや,生活環境が変化したことが,病状悪化の一因とされている。また,パンデミック以前より早期治療介入の重要性が高まっている一方で,医療アクセスの複雑さが問題点として指摘されており,適切な治療経路の確立が求められている。本稿では,これらの状況を疫学的な状況を踏まえながら,特に日本国外での状況に焦点を当てて,COVID-19のパンデミックによる摂食障害診療体制への影響,今後の課題に関して,文献的なレビューと考察を行う。

  • 平出 麻衣子, 吉内 一浩
    2024 年 4 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    運動は心身の健康に多くの利益をもたらすが,アスリートは過酷なトレーニング環境や社会的なプレッシャー,体型の維持や増減の必要性などから摂食障害や相対的エネルギー不足,骨粗鬆症,無月経などに陥りやすいことが知られている。しかし,摂食障害を抱えるアスリートの中には,自らの症状を申告したり,専門家に相談したり,治療を受けることに消極的なケースも少なくない。したがって,スクリーニングや介入は,綿密に計画・実施される必要があり,アスリートにおける摂食障害のリスク要因を理解し,予防策や早期発見を含めた適切な対策が求められる。本稿ではアスリートと摂食障害に焦点を当て,先行研究と推奨事項をご紹介する。

  • 山田 恒
    2024 年 4 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    摂食障害の発症に関わる要因として,ダイエットとその背景にあるやせ礼賛の社会文化の問題は広く知られており,やせ礼賛の価値観に影響を与えているのが,メディアに露出するファッションモデルである。欧米各国では,2006年以降ファッションモデルの摂食障害による急死報道が相次いだ結果,法律やファッション団体の自主対応として痩せすぎモデルが規制されている。イタリアやイスラエルではBMI 18.5,スペインではBMI 18.0未満はファッションショーに出演できなくなり,フランスでも法規制が2017年より施行されている。痩せすぎモデル規制の有効性についての明確なデータはないが,ファッション業界の対応やプラスサイズモデルの登場,ボディポジティブムーブメントなど,痩せ以外の体型の多様性を受け入れる社会への変化が少しずつ起こっていると考えられるが,日本での変化は乏しいのが現状である。

連載 文献紹介 第4回
連載 摂食障害治療の今 第4回
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