教育心理学研究
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原著
中年期の老いの自覚と対処における「関心」の向け方による相違
若本 純子
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2010 年 58 巻 2 号 p. 151-162

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抄録

 本研究は, 領域個別的自己概念である「関心」の向け方の違いが中年期発達の個人差を規定すると想定し, 理論的検討から関心全低群, 関心全高群, 関心分配群の3タイプを設定した。研究1では「関心」タイプの妥当性が検証された。まず, 不安-防衛タイプ(安田・佐藤, 2000)との関連から基準関連妥当性が検討され, 全低群と「抑圧型」, 全高群と「高不安群」との対応が見出された。続いて, 不安, 自尊感情, 情緒不安定性と「関心」タイプとの関連から内容的妥当性が検討され, 全高群は高不安, 低自尊感情, 高情緒不安定性の特徴をもち, 分配群との峻別性が示された。いずれの結果も仮説に一致したため, 「関心」タイプは一定の妥当性をもつと判断された。研究2では, 老いの自覚と対処の過程を「関心」タイプ別に検討したところ, 異なる特徴が見出された。全低群は, 衰えを自覚せず対処に至る心的過程も活性化されない傾向があった。全高群と分配群の老いの自覚から対処の過程は概ね類似していた。しかし, 心理社会面の衰えを感じたとき, 分配群は問題焦点的な対処を減らすという適応的な移行を示すのに対して, 全高群では対処を放棄する傾向が見出された。

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© 2010 日本教育心理学会
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