2011 年 59 巻 2 号 p. 206-218
10歳の自閉症スペクトラム障害の児童2名に, 援助事態を明確にする準備行動と, 準備行動によって明確になった援助行動の反応型をセットにして獲得させた。具体的には, いずれもピースが不足している2組のパズルを前に, 被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(準備行動課題1), 何もない壁や机を前に被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(準備行動課題2), ピースが不足している1組のパズルを前に, 被援助者が「困ったな」と表出している援助事態(統制課題)を提示した。そして, 例えば「どっちで困っていますか?」など, 援助事態を明確にする行動(準備行動)と, 被援助者の応答によって指定されたパズルのピースを持ってくる行動(援助行動の反応型)を標的行動とした。すると, 2名の対象児は全ての課題について標的行動を自発し, 1名は介入の対象となっていない課題や家庭における準備行動に効果が般化した。結果を受けて, 不明確な事態を明確にする準備行動が自閉性障害児の発達状況に合わせて適用できる可能性と, 準備行動が援助行動の効率を高め, 場合によっては不適切な援助行動の予防と強化機会を増加させる可能性について考察した。