教育心理学研究
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原著
選言3段論法に関する推論様式の発達
大浦 賢治
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2012 年 60 巻 3 号 p. 235-248

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抄録

 選言文「pまたはq」の推論スキーマに関しては, Piagetの発達理論をめぐってこれまで対立する2つの見解が存在した。1つはBraine & Rumain(1981)によって主張された5, 6歳からでも選言文の推論が可能であるとする立場であり, もう1つは中垣(1991)によって主張された11, 12歳以降にそれが可能になるとする立場である。この見解の相違は「pまたはq」におけるpとqの概念的関係の違いが大きな原因であると考えられた。そこで本研究では, 概念的関係の異なる2つの課題を同時に実施することにより, この矛盾点を解決すると共に, 選言3段論法課題における子どもの認知発達について検討した。その結果, 選言3段論法推論に関しては, pとqが概念的に両立する場合よりも両立しない場合の方が, 容易に推論のなされることや, 学年が上がるにつれて両立的選言解釈をして回答する割合の多いこと, さらに選言3段論法に関する推論スキーマの獲得が完了する時期は, Braine & Rumain(1981)が主張した時期よりもかなり後になってからであることなどが判明した。

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© 2012 日本教育心理学会
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