2012 年 60 巻 4 号 p. 392-401
本研究の目的は, 第1に先延ばし意識特性尺度を用いて3パターンの先延ばしを行いやすい者を特定することであり, 第2に3パターンの先延ばしを行いやすい者の適応性について検討を行うことであった。大学生235名を分析対象とした。主成分分析の個人得点を用いて調査対象者を群分けし, 精神的健康および気晴らし尺度の平均差の検討を行った。分散分析の結果, 以下の3点が明らかになった。第1に, 否定的感情が一貫して生じるパターンの先延ばしは, ストレスコーピングとして機能しない非機能的な気晴らしを繰り返し行い, 日々の精神的適応を悪化させる不適応的な先延ばしであることが明らかになった。第2に, 状況の楽観視を伴うパターンの先延ばしは, 気分緩和を意図して先延ばしを行い, 先延ばし中には課題を忘れて気晴らしを楽しむことができるパターンであるが, 気晴らしへの依存を起こしやすいことが明らかになった。第3に, 計画性と気分の切り替えが生じやすいパターンの先延ばしは, 課題のために考えをまとめようと意図して一時的に先延ばしをした結果, 目標明確化が進み, 気分悪化が生じない適応的な先延ばしであることが明らかになった。