教育心理学研究
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原著[実践研究]
中学校の数学授業における一生徒の文字式理解プロセスの質的研究
—聴くことと援助要請に着目して—
山路 茜
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2017 年 65 巻 3 号 p. 401-413

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抄録

 本研究の目的は, 中学校1年生の文字式の授業におけるつまずきへの対処として聴く行為と援助要請の行為に着目し, 生徒の理解プロセスを授業の状況に位置づけて明らかにすることである。文字と式, 方程式, 不等式の計16時間の授業を観察した。一生徒の学習事例からつまずきが表出された授業における学習状況を描出し, 聴き方, 援助要請の仕方に着目して発話記録, ノートを多面的な記述による質的方法で分析した。その結果, 単体では学習に効果的でないとされる援助要請の仕方でも, 学級全体での議論を能動的に聴く行為が事前にあった場合に, 自分の考えと学級で共有されて進む理解との齟齬を感じながらなされた援助要請は, 誤解を解消して先に進むために役立っていた。対照的に, グループでの議論の間に具体的に自分の考えを述べて援助要請を行った場合には, その時点で理解が十分定着しなかったとしても, その後の学級全体での議論を能動的に聴く行為によって補われていた。一生徒の学習事例の検証であることに課題は残されるが, 聴くことや援助要請に関して, 内容や形式に加え, 行われる際の理解状況や行為の組合せが生徒の学習への効果に関与している可能性が示唆された。

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© 2017 日本教育心理学会
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