教育心理学研究
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原著
制御焦点がパフォーマンスに及ぼす影響
―学習性無力感パラダイムを用いた実験的検討―
外山 美樹湯 立長峯 聖人黒住 嶺三和 秀平相川 充
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2018 年 66 巻 4 号 p. 287-299

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抄録

 本研究の目的は,学習性無力感パラダイムを用いて,実験参加者にストレスフルな失敗経験を与えた後の,制御焦点と課題パフォーマンスの関連を検討することであった。促進焦点と防止焦点で基本的な認知能力のパフォーマンスには差はないが,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点のパフォーマンスが優位になるという仮説を立てて検証を行った。実験参加者は大学生57名であった。本研究の結果より,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも,パフォーマンスが高いことが示され,仮説が支持された。また,解決可能な課題と解決不可能な課題が混在している課題においては,防止焦点のほうが促進焦点よりも,パフォーマンスが高い傾向にあることが明らかとなった。本研究より,文脈によって促進焦点と防止焦点のどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示された。促進焦点は,挫折や失敗から回復する“レジリエンス”が優れており,一方で,防止焦点は,解決不可能な課題が混在した文脈での課題パフォーマンスが優れていることが示唆された。

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© 2018 日本教育心理学会
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