教育心理学研究
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原著[実践研究]
ライフキャリア・レジリエンスプログラムの開発と効果評価
―障害者の就職と定着を目指して―
高橋 美保鈴木 悠平
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2019 年 67 巻 1 号 p. 26-39

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抄録

 障害者の就労については,支援が進められている一方で離職率も高く,障害者個人が就職をし,その後も職場で定着するための支援が必要とされている。就労継続に向け,障害者個人が就労移行支援段階で予防的に獲得すべきものの一つにライフキャリア・レジリエンスがある。本研究では,就労移行支援の中で,障害者がライフキャリア・レジリエンスを自覚しそれを活用できるようになることを目的にプログラムを開発,実施した。介入群46名,統制群48名を対象に,ライフキャリア・レジリエンスの5つの下位尺度(現実受容,多面的生活,長期的展望,楽観的思考,継続的対処)と就業効力感,精神健康度(GHQ12)を従属変数とし,時間(プレ対応,プログラム5終了後,フォローアップ2終了後)と群(介入群,統制群)の2要因の分散分析を行った結果,現実受容,長期的展望,多面的生活,継続的対処,就業効力感,精神健康度は有意差は見られなかったが,楽観的思考に交互作用が見られたことから,少なくともプログラムの参加によって楽観的思考が高まることが示唆された。今後は,リスクの回避などプログラムの更なる精緻化と長期的効果や障害者の就職や定着への影響の検証が求められる。

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© 2019 日本教育心理学会
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