教育心理学研究
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原著
大学運動部活動における部員の自律的動機づけが部活動への適応感に及ぼす影響
―主将のリーダーシップを調整変数として―
外山 美樹湯 立
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2019 年 67 巻 3 号 p. 175-189

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抄録

 本研究の目的は,運動部活動の部員の自律的動機づけと部活動への適応感との関連が,部活動のリーダーである主将のリーダーシップによって調整されるのかどうかを,部活動の集団レベルの動機づけを統制したうえで検討することであった。分析対象者は,大学の運動系部活動に所属し,その運動系部活動の主将ではない大学生327名(24集団)であった。本研究の結果より,部員の運動に対する自律的動機づけが「部の雰囲気への満足」に与える影響は,主将の技術指導,人間関係調整,統率の程度によって調整されることが示された。主将の技術指導,人間関係調整,統率が高い場合には,自律的動機づけが「部の雰囲気への満足」に正の関連を示したが,それらが低い主将の集団では,自律的動機づけと「部の雰囲気への満足」の正の関連が弱まることが示された。先行研究では,運動に対する自律的動機づけが高い部員は,部活動への適応感が高いことが示されている。しかし,本研究の結果から,個人の傾向と環境が適合していなければ,部活動への適応感にはつながらないことが示され,個人の適応感を捉える際には,個人要因と環境要因の交互作用を考慮する必要性があることが示唆された。

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© 2019 日本教育心理学会
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