2019 年 67 巻 3 号 p. 162-174
本研究の目的は,制御焦点とライバル関係の関連について検討することであった。具体的には,特性的に促進焦点の個人は,特性的に防止焦点の個人よりもライバル関係を形成しやすく,ライバル関係による恩恵を受けやすいかどうかを検討した。加えて,制御焦点の違いがライバルによる影響を介してパフォーマンスに影響するかどうかも補足的に検討した。研究は2つ行い,いずれも大学生スポーツ競技者を対象とした。研究1では,「ライバル」という言葉を用いた調査研究を行った。検討の結果,促進焦点の個人はライバル関係によって理想自己の顕在化と鼓舞的動機づけの生起が生じやすいことが明らかになった。また,促進焦点の個人は鼓舞的動機づけの生起を介してパフォーマンスへの自己効力感を予測することも示された。研究2では,「ライバル」という言葉を用いずに研究1の追試を行い,結果が概ね再現された。これらは事前の想定と合致する結果であった。ライバルの有無や数については,制御焦点との関連があまりみられなかった。最後に,防止焦点の個人に適した他者の特徴について考察された後,本研究の課題と今後の展望について議論が行われた。