2020 年 68 巻 1 号 p. 50-65
本研究では,受け手に合わせた情報発信の促進を目的として,タブレットによるプレゼンテーション視聴と受け手との相互フィードバックを行い,これらの介入が情報発信プロセスと情報発信活動への動機づけに与える影響を検証した。中学校1年生256名が参加した「本の魅力を伝える授業」を対象とし,ペアでのプレゼンテーション後に(1)録画したプレゼンテーションを1人で視聴する「視聴条件」,(2)相互フィードバックを行う「ペア条件」,(3)プレゼンテーションをペアで視聴し,相互フィードバックを行う「視聴・ペア条件」の3条件を設定し,ペア活動後の発信内容の変化について比較した。その結果,視聴・ペア条件では他の条件に比べて,プレゼンテーション後の発信内容の修正がより多く行われており,情報発信活動への興味と困難度の評定が共に増加していた。視聴・ペア条件の生徒は情報発信への興味を感じると同時に,受け手に合わせることの難しさも認識しており,それゆえに発信する内容を積極的に調整していたのだと考えられる。以上より,プレゼンテーション視聴と相互フィードバックを組み合わせることで,受け手に合わせた調整が効果的に促進される可能性が示された。