教育心理学研究
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原著[実践研究]
こころのスキルアップ教育が新入生に及ぼす影響
―Q-Uを用いた中学校での探索的研究―
中野 有美鋤柄 増根志村 尚理中川 敦夫大野 裕
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2020 年 68 巻 1 号 p. 66-78

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抄録

 本研究は,認知行動療法の考え方を活用したこころのスキルアップ教育プログラムを中学1年生に実施し,生徒の学校生活への意欲,学級から受ける受容感・安心感への影響を検討した。各学級の担任教員が,5月から6月にかけて本プログラムを4回行い,日常の体験を状況,気分,思考,行動に分けて整理することや,気分が状況のとらえ方から影響を受けていることを生徒に学習させ,さらに怒り感情に向き合い対処する方法を学ばせた。自記式の質問紙Questionnaire-Utilities(Q-U)を,このプログラムの前後に実施し,学校生活への適応度を測定した。同時期に,ほぼ同等の中学校(統制群)に,Q-Uのみを実施した。その結果,教育プログラム実施校では,Q-Uの学校生活意欲尺度得点が上昇し,未実施校では減少していることが示された。次に,意欲尺度得点の下位尺度分析を行ったところ,教員との関係,次に友人との関係において,総合得点の分析結果と類似の傾向が見られた。さらにQ-Uの学級満足度尺度における承認得点が,未実施校では減少しており,実施校では変化がなかった。これらの結果により,本プログラムが実施される学校環境で過ごす中学1年生は,教員や級友との良い関係性を中心に学校生活への意欲が維持,増進される可能性が示された。

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© 2020 日本教育心理学会
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