教育心理学研究
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原著
小中移行期における学校享受感の変化様態および教師・親との縦断影響プロセス
―一貫校と非一貫校を比較して―
侯 玥江太田 正義加藤 弘通
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2020 年 68 巻 4 号 p. 360-372

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抄録

 小学校から中学校への移行における学校適応の困難を見据え,学校間接続を円滑化するため近年小中一貫教育が実施されてきた。しかし学校環境の変化の程度と学校適応感の変化について,十分に検討されていない。また学校適応感と大人との関係性との縦断的な影響プロセスが未検討であるという問題点が挙げられる。本研究では,小中一貫校の121名の児童生徒と非一貫校の小中学校173名の児童生徒を対象に,小学校6年生後期から1年間3時点にわたる縦断調査を行った。分析の結果,(1)一貫校は非一貫校よりも移行における環境の変化が小さいにもかかわらず,二校間の学校享受感の変化軌跡には違いは認められなかった。(2)学校享受感の変化軌跡は,平均的に見ると軽微に低下するが,個人差が認められる。学校享受感の変化量は0に集中し,ごく少数の子どもが明確な向上と低下を示した。(3)移行後の中1前期の教師との関係から中1後期の学校享受感への縦断的影響が見られたが,逆方向の学校享受感から教師との関係への影響がどの時期にも認められた。親との関係から学校享受感への縦断的な影響は認められなかった。

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© 2020 日本教育心理学会
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