教育心理学研究
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原著[実践研究]
大学生が作成する事後ノートの質とテスト成績の関連
―試験時に参照するための事後ノート作成方略の認知に注目して―
犬塚 美輪三浦 麻子小川 洋和
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2022 年 70 巻 1 号 p. 35-47

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抄録

 本研究では,大学での授業において,試験時に参照するためにノートをまとめ直す(事後ノート作成)方略に関する認知とその変化を検討するとともに,作成された事後ノートの質的特徴と成績の関連を検討した。研究1(n=171)では,講義科目において,試験時に参照できる場合に事後ノート作成の有効性や工夫の認知が高く,コストが低く認知されることが示された。また,作成された事後ノートの記述量と図の使用頻度が事実問題の成績を予測した。研究2(n=114)では演習科目において中間テストと事後ノート作成を繰り返した。期末試験問題のうち,事実問題には事後ノートの記述量と体制化の指標の正の効果,まとめ文をそのまま写すことの負の効果が見られた。知識適用問題と説明問題では記述量の効果は有意ではなく,体制化とまとめ文の写しの有無が成績を予測した。方略としての認知は,工夫の認知に有意な変化が認められたが効果量は小さかった。研究3(n=45)では,演習科目において事後ノート作成の繰り返しに加え明示的教示を実施した。作成された事後ノートの体制化の指標が知識適用問題の成績を予測する結果が得られ,方略の認知に関しては,工夫の認知が有意な上昇を示した。

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© 2022 日本教育心理学会
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