教育心理学研究
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原著
理科授業における日常場面の問題の提示・協同的解決が理解と興味に与える影響
―中学生を対象とした実験授業による検討―
田中 瑛津子
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2022 年 70 巻 2 号 p. 117-130

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抄録

 理科教育において,学習内容と日常場面における現象との結びつきを認識させ,深い理解や興味を育むことは,重要な課題である。本研究では,中学生を対象とした実験授業において,授業冒頭で日常場面における発展的な問題を達成目標課題として提示し,講義後にその問題にグループで協同的に取り組ませることが,生徒の理解や興味に与える影響について検討した。日常場面の問題を取り扱うことの効果を検証するため,実験場面を題材とした問題を扱う「実験的問題群」と,問題の構造自体は同じだが問題の文脈を日常場面に当てはめた問題を扱う「日常的問題群」の2つの群を設定し,比較した。結果,「日常的問題群」の方が,問題提示後の一時的な興味や,授業後および1ヶ月後における日常関連型興味(理科の学習内容と身近な現象が関連づいていることに基づく興味)が高いことが示された。また,講義後および協同後のテスト正解率には群間差が見られなかったものの,「日常的問題群」においてのみ,協同的問題解決を通じて正解率に有意な伸びが見られた。

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© 2022 日本教育心理学会
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