教育心理学研究
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原著
新型コロナウイルス感染症拡大状況において正常性バイアスは見られるのか?
―新型コロナウイルス感染症に関する認知とその影響―
外山 美樹長峯 聖人
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2022 年 70 巻 2 号 p. 178-191

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抄録

 本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下において,正常性バイアスが生じているかどうかを検討すること,および新型コロナウイルス感染症に関する認知(自身の感染可能性,感染者増加可能性,終息の予期,感染予防の自覚,自粛の自覚)が非自粛行動,感染者への怒り,ストレスならびに抑うつと関連するのかどうかを検討することであった。調査対象者は,東京都に在住の20歳代から60歳代の710名で,2つの時点でweb調査を実施した。本研究の結果より,新型コロナウイルス感染症拡大の状況のような慢性的,長期的な事象においても正常性バイアスが見られることが確認された。また,新型コロナウイルス感染症に関する認知の内容(自身の感染可能性の認知,外界のリスク認知,安全性に関する認知)によって,どの側面と関連するのかが異なることも明らかとなった。さらに,感染予防の自覚と自粛の自覚においては,2ヶ月後の非自粛行動を予測することが示された。今後は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下における正常性バイアスのより長期的な影響を検討するとともに,正常性バイアスの規定要因を検討することの必要性が議論された。

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© 2022 日本教育心理学会
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