教育心理学研究
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原著
非復元抽出形式での授業評価における学生が重要視する知見の寡占度・飽和度の計算
―ジップ分布を用いた分析―
豊田 秀樹馬 景昊大橋 洸太郎
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2022 年 70 巻 3 号 p. 246-259

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抄録

 講義の改善を考える際には,選択式だけでなく自由記述式の授業評価が参考になる。その場合に重要となる観点の1つは,収集した意見の飽和度である。飽和度とは,集めた意見が意見全体の母集団に占める割合のことである。

 本研究では,まず一度に複数の意見を求める自由記述式の授業評価の結果の分布が,一度に1つの回答を求めた場合を想定した素朴な分布の状態に比して歪んでいることをシミュレーションで確認した。そしてジップ分布を用い,意見の非復元抽出を想定した場合の歪みのない真の度数分布,及び意見の飽和度をベイズ推定によって推定する方法を提案した。またジップ分布を用いることによって,全体の意見に占める,上位の出現頻度の意見群の得られ方の集中度合を示す指標,寡占度の推定方法も提案した。さらに,様々なデータの収集人数からの授業評価アンケートを用いた実例を示し,推定精度に関する議論を行った。

 本研究の提案手法によって,授業評価の内容を吟味するだけでなく,その出現頻度の分布の観点から授業評価の結果の考察をする視点を提供できた。これにより,講義の改善を考える際の観点の幅を広げることができた。

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© 2022 日本教育心理学会
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