教訓帰納は,問題解決後に学習者が教訓を引き出す学習方略であり,その有効性が示唆されている。ところが,国語,中でも文章読解の学習における教訓帰納の介入研究は,学習者の実態からその必要性が示唆されているにもかかわらず,ほとんど行われてこなかった。そこで,本研究では,認知カウンセリングの事例から,文学的文章の学習において学習者が教訓帰納を身に付ける過程で,どのようなつまずきを示し,そのつまずきに対してどのような介入が求められるかを分析することを試みた。クライエントは,文学的文章の心情理解や記述問題を苦手とする小学4年生の女子で,読むコツ(読解方略)や問題を解くコツ(問題解決方略)を教訓として抽出することはしていなかった。そこで全10回の学習相談を通じ,カウンセラーとのやりとりを通じて抽出した教訓を用いて問題解決を促すとともに,学習方略として自ら教訓帰納を活用できるよう支援を行った。その結果,教訓帰納を学習方略として意識化できるようになり,学習意欲や学習観の面においても改善が認められた。考察では,文章読解において教訓帰納を促すための介入のポイントや研究の課題が論じられた。