2024 年 72 巻 1 号 p. 1-10
本研究では,教育の現場でよく用いられるブロック練習に指摘される弱点が,実際に顕在化するか否かを検証した。その弱点とは,練習問題をブロック練習の構成で提示した場合,学習者が「問題の種類を見分けて,必要な方略を想起し,選択する」ことなく,「方略を問題に実行するだけ」になる,というものである。本研究では,それが特に顕在化し易い場面と想定される,1単元の学習計画の中の「各課題の学習を行う場面」で検証を行った。大学生43名に,まず学習課題である立体「ウェッジ」の求積に必要な方略「r2hπ/2」を理解してもらい,次に練習問題を提示した。その1問目を,事前の告知なしに「三角柱」の求積問題とした。つまり,参加者が「問題の種類を見分けて,必要な方略を想起し,選択した」ならば,直前に理解したr2hπ/2を使って解くことはないだろうと判断できる問題とした。三角柱の問題が出題された際の参加者の最初の反応を分析した結果,43名中35名(81%)がr2hπ/2を使って解こうとしたことが確認された。つまり,この場面では,早くも1問目の問題を解く時点から,「方略を問題に実行するだけ」になる,という弱点が顕在化し易い可能性が示された。この結果を踏まえて,ブロック練習の捉え方や,現場での実践の考え方について議論した。