これまで,ルールによる課題解決の困難さが繰り返し指摘されてきた。教授されたルールによる課題解決を暗黙に想定する「教授主義的前提」に立つ従来の研究は,本来可能なはずの課題解決を阻害する認知的要因に焦点を当ててきた。これに対し本研究では,学習者自身の知識構成を重視する「構成主義的前提」のもとに,学習者が構成する知識水準とルールの機能の関係に着目し,ルールの機能の理解を促進するための教授が学習者の知識構成水準を引き上げ,課題解決を促進するという仮説を検証した。大学生を対象に,既知の事柄を要約的に表現する「要約機能」,未知の事柄に関する予測を可能にする「予測機能」,ルールを構成する概念の理解を深める「深化機能」をそれぞれ強調した教材によるルール学習を求めた。学習成果はルールによる解決が可能な3種類のテストにより測定した。その結果,テスト成績が最も良かったのは,「深化機能」を教授した群であり,知識構成の水準が高い場合に高いパフォーマンスが得られることが確認された。以上の結果は,ルールによる課題解決の促進において,ルールの機能的側面の教授が重要であることを示すものである。