2024 年 72 巻 3 号 p. 183-196
これまでに実施された大学生のチームワーク能力を向上させるトレーニングは,対面での実施を前提としたものであった。本研究では,大学生のチームワーク能力を向上させるトレーニングをオンラインで実施し,トレーニングの有効性が確認されるか否かを検証した。検証対象とした三つの条件は,(a)完全オンライン実施条件(男性12名,女性4名),(b)一部オンライン実施条件(男性8名,女性10名),(c)非実施条件(男性10名,女性3名)であった。全員が,著者が担当する授業を受講する大学生であった。トレーニングを実施した条件では著者がトレーニングをオンラインで実施し,トレーニングなし条件では著者がトレーニングとは関連のない講義を実施した。トレーニングは15セッションあり,1セッションあたり90分であった。トレーニング前後の時期に,調査対象者に,社会的スキルや,チームワーク能力の五つの構成要素(「コミュニケーション能力」,「チーム志向能力」,「バックアップ能力」,「モニタリング能力」,「リーダーシップ能力」)を自己報告する尺度に回答するように求めた。その結果,非実施条件に比べ,トレーニングをオンラインで実施した条件では,社会的スキル,チームワーク能力の「チーム志向能力」を除く四つの能力の多くの下位尺度で,事後の得点の上昇が大きかった。完全オンライン実施条件と一部オンライン実施条件には,それぞれの尺度の変化に有意差がみられなかった。したがって,オンラインで実施したトレーニングが,大学生のチームワーク能力を向上させる点で有効であると考えられる。